2014年3月期の経営環境は、上期は前年度のエコカー補助金制度に伴う新車販売の反動減により需要が全体的に落ち込みました。下期はこの影響が一巡したことに加え、2014年4月からの消費税増税を見越した駆け込み需要により新車・中古車およびカー用品全般の需要が高まりました。
国内のオートバックスチェン全体における営業動向については、「カー用品販売」は販売促進施策と販売体制を強化したタイヤ・ホイールの売上は前年を上回りましたが、カーナビゲーションの単価下落などによりカー用品全体の売上は前期比1.3%減少しました。「車検・整備」は、店舗への指導強化やインターネットでの車検予約を開始したことなどにより、車検実施台数は前期比1.3%増加の約58万台となりました。また、「車買取・販売」については、加盟店舗が前期末の244店舗から359店舗に増加し、自動車買取査定システムの刷新や教育・販売体制の強化が進んだ結果、総販売台数は前期比25.5%増加の約23,100台と大きく伸長しました。
このような店舗段階での営業状況を反映して、当社グループの売上高は、前期比0.7%増加の2,317億円となりました。さらに粗利率の改善や販売費及び一般管理費の抑制、店舗子会社における効率的な運営の推進などにより、営業利益は前期比9.4%増加の139億円となりました。なお、当期純利益は前期比28.9%増加の98億円となりました。
当社は「オートバックス 2010 中期経営計画」において、「国内FC事業」に軸足を置き、「店舗収益率と市場シェアの向上」を事業戦略の柱として抜本的な強化を進めてきました。遺憾ながら営業利益、ROEは計画を達成することはできませんでしたが、どのような環境にあっても安定的な収益を実現できる体質に転換できたと捉えています。
具体的な成果として、「店舗収益向上策」においては、オートバックス全店の改装による売場改革、仕入改善などによる粗利改革、人材とオペレーション改革の3つの軸で重点的に施策を講じた結果、店舗段階の営業利益率の改善やメンテナンス関連の商品・サービスの売上が伸長するなどの成果に結びついています。また、「車検・整備」「車買取・販売」が着実に拡大できたのも大きな成果のひとつです。
「市場シェア向上策」においては、これまで出店してこなかった小商圏を中心に新規出店を積極的に進め、4年間で82店舗を新たに出店しました。なかでも2012年3月期より実験を進めているタイヤ専門館を新たに3店舗出店し、今後の手応えを感じています。また、インターネット販売のチャネル強化も進め、新たな顧客の獲得に向けた取り組みを進めることができました。
しかしながら、オートアフター市場における当社のシェアは目標の水準に達しておらず、今後、さらなる収益拡大に軸足をおいた成長戦略を実行していくことが必要であると考えています。
「オートバックス 2010 中期経営計画」実績
「オートバックス 2010 中期経営計画」の実施状況・評価
項目 | 主な施策・目標 | 実施状況 | 評価 |
---|---|---|---|
1 店舗収益 |
既存オートバックス店舗営業利益率6.9% (2010年3月期5.2%) |
既存オートバックス店舗営業利益率6.2% (対2010年3月期比+1.0pt) |
△ |
売場改革 |
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◯ |
粗利改革 |
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◯ |
人材と オペレーション 改革 |
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◯ |
車検拡充 |
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△ |
車販売拡充 |
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◯ |
2 市場シェア |
オートアフター市場シェア18% (2010年3月期15.1%) |
オートアフター市場シェア14.9% (対2010年3月期-0.2pt) |
× |
新規出店 |
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△ |
サービス業態 開発 |
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|
△ |
マルチチャネル 戦略 |
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◯ |
3 海外事業 |
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◯ |
4 本部単体経費の |
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◯ |
5 財務戦略 |
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|
△ |
6 CSR/ガバナンス |
|
|
◯ |
国内カー用品市場は、カーナビゲーションの単価下落やカースポーツ需要の低下などの影響により、今後も年率2~3%の縮小も視野に入れる必要があると考えています。一方で、国内の自動車の保有台数は変わらず、平均使用年数の長期化するなか、メンテナンスや車検・整備などを含むオートアフター市場全体で見ると、安定した需要が見込まれます。
この市場は、これまでの担い手であったガソリンスタンドや中小整備工場などが減少する一方で、カーディーラーを中心とした競争激化やインターネット・通信関連企業などの異業種参入も予想されます。しかし、当社はオートバックスのブランドやお客様の来店頻度の高さなど、競合に対して差別化できる強みを持っています。今後もこうした強みを生かした事業展開で、市場における競争優位性を明確にしていく考えです。
自動車保有台数と平均使用年数
注:保有台数は乗用車の台数
(トラック、バス、二輪車等を含まない)
出典:一般社団法人自動車検査登録情報協会
「わが国の自動車保有動向」
カー用品市場/車検・整備市場
昨年度までの中期経営計画の成果を踏まえ、「2014中期経営計画」は中長期の成長を実現する新たなステージのスタートと位置づけ、「オートバックス事業」の収益拡大に加え、将来の成長の柱として「新規事業」「海外事業」を育成し、3つの事業の柱を構築していきます。
オートバックス事業では、オートアフター市場における競争優位性を確立するために、お客様への「利便性」と「安心」の提供価値を再構築し、従来のお客様に加え「車に詳しくないが、大切に乗り続けたいお客様」からのご支持を高めていきたいと考えています。そのために、車の販売からメンテナンス、そして車に乗る楽しさを提供する「クルマのワンストップ・サービス」業態への変革を実行していきます。
新規事業については、当社の強みを生かすことができる車関連分野を中心に新たな事業を育成します。M&Aや提携によるスピード感を重視した展開を図り、来期以降、積極的に経営資源を投下していきます。
海外事業では、成長期を迎えるASEAN地域を中心に、従来の店舗形態にこだわらず卸売販売などの周辺事業において、事業を拡大していく方針です。
経営目標については、最終年度の2018年3月期に営業利益180億円、ROE8%、DOE(連結株主資本配当率)3%以上の実現を目指していきます。
「2014中期経営計画」の基本方針
(2015年3月期~2018年3月期)
経営数値目標
(2018年3月期)
「2014中期経営計画」では、オートバックス事業のさらなる成長に向け、「カー用品」「車検・整備」「車買取・販売」「Eコマース」の4つの重点課題を設定し、施策を展開していく考えです。
カー用品では、新規出店による拠点の拡大とEコマースの活用によるタイヤ販売数量の拡大を図ります。また、さらなる商品力の強化に向け、PB商品戦略を再構築し、信頼の品質、安心の価格の商品・サービスを開発していきます。
車検・整備については、車検拠点の拡大とお客様の利便性向上により車検台数の拡大を図り、最終年度には実施台数100万台を目指します。現状、店舗ごとに車検の実施件数に差があり、実施件数少ない店舗への指導を継続するとともに、顧客データをより活用することでお客様へのアプローチを強化していきます。
車買取・販売では、店舗での展示車両の増加、買取査定システムの刷新、取扱い店舗の増加により、順調に販売台数が伸長しています。2015年3月までに全店規模で展開しマス媒体をはじめとした広告宣伝、販売促進を強化することで、お客様の認知度を高め、販売台数の拡大を図っていきます。
Eコマースにおいては、新たなお客様との接点の拡大に向け、商品の拡充とオンラインショップ“AUTOBACS.COM”の認知度を高めるとともに、ネットで購入した商品を店舗で取り付けるサービスの提供など、店舗網を持つ強みを生かした展開を進めます。
これらの施策の実行に加え、店舗オペレーション改革と人材育成を推進し、「カー用品」「車検・整備」「車買取・販売」それぞれの店舗内における連携を強化することで、お客様のお悩みやご要望に的確にお応えする「クルマのワンストップ・サービス」業態への変革を実現します。国内オートバックス事業においては、「クルマのことならオートバックス」と信頼され、支持されるブランドを確立し、競合他社との差別化を明確にすることで、中長期的な成長を目指していきます。
重点課題における数値目標※
カー用品:タイヤ販売数量
車検・整備:車検実施台数
車買取・販売:売上高
※国内オートバックスチェン店舗における目標
Eコマース:売上高
海外事業においては、現在、フランス、シンガポール、タイ、中国、台湾、マレーシア、インドネシアの7つの国と地域に展開しており、収益改善の取り組みを進めた結果、2014年3月期に黒字化を達成しました。
今後、ASEAN地域を中心に事業の拡大を図る上で、スピード感が重要だと考えています。現地企業とのパートナーシップによる事業基盤の整備を進めるとともに、店舗における小売・サービス事業の展開にとどまらず、商品の卸売事業など周辺事業へ参入し、積極的な事業拡大を図ります。2014年3月期にはその布石として、インドネシアで現地企業とカー用品卸売事業の合弁会社を設立し、マレーシアにおいては、カー用品の卸売を同国で展開する日系企業と業務資本提携を締結し、小売を中心とした展開を加速しています。
当社グループにとってのCSRとは、「経済、環境、社会に配慮した経営を行い、お客様に豊かなカーライフの提案を行う、社会に有益な企業であり続けること」です。そのために当社グループでは、お客様はもとより、お取引先様、株主・投資家の皆様、地域社会、従業員、行政機関など、あらゆるステークホルダーとの関係を重視した企業活動を推進しています。また、環境への対応も重要なテーマです。事業における環境負荷低減に加え、自動車・パーツのリユースや店舗への電気自動車の充電スタンドの設置、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーに対応した整備士の育成など、クルマ社会の環境対応に積極的に貢献していく考えです。
さらにこうしたCSRの基礎として、グループ全体のコンプライアンスの指導・啓発活動を継続するとともに、統合リスクマネジメントを実践し、リスクに適切に対応できる態勢の強化も進めていきます。
財務戦略については、積極的かつ投資収益性を重視した投資を行う計画で、4年間で総額500億円の事業投資を見込んでいます。株主還元については、資本効率の向上を目指して、経営環境や財務の安定性を考慮しつつ積極的な還元を行う方針です。
配当方針については、引き続きDOE3%以上を維持し、収益の状況に応じて安定的、継続的な配当を実施していきます。当社の最重要指標はROEです。ROE向上のために投資もしくは自社株買いも含めた株主還元の実施を機動的に判断していきたいと考えています。
中期経営計画の実行により中長期の成長を確かなものにし、当社グループの企業価値をさらに高めていく所存です。株主・投資家の皆様をはじめステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも当社グループへのご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
一株当たり配当額
注:1.2013年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を実施しており、2013年3月期以前の数値は分割の影響を遡及換算しています。
2.2014年3月期の配当額は、オートバックス誕生40周年記念配当10円を含みます。
自己株式の取得額