トップメッセージ
代表取締役 社長執行役員
湧田 節夫
中長期の成長に向けて、
グループ一体で新たな価値創造を追求していきます
当期(2015年3月期)は、「オートバックス事業の収益拡大と新たな事業の育成」を基本方針とする
4ヵ年の「2014中期経営計画」をスタートしました。
業績においては遺憾ながら減収減益となったものの、「クルマのワンストップ・サービス」業態への変革に向けた基盤整備を
進めることができました。
「クルマのことならオートバックス」と支持・信頼いただけるチェンを目指して
お客様の「安心」と「利便性」に貢献する新たな価値の創造に、グループ一体となって挑戦してまいります。
当期は減収減益と
なりましたが要因の分析を
お願いします。
消費増税前の駆け込み需要の反動とその後の消費低迷、新車販売台数の減少を主因に、「カー用品販売」が低調となったためです。
当期の当社グループの売上高は、前期比9.6%減少の2,094億円、営業利益は同54.1%減少の64億円、当期純利益は同52.9%減少の46億円となりました。
減収の主な要因は、2014年4月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動に加え、増税後の個人消費の冷え込みが想定以上に長引き、国内新車販売も前期比6.9%下落した結果、国内オートバックス店舗の「カー用品販売」の売上が前期比11.5%減少したことによります。カーナビゲーションの単価下落や大都市の降雪が前期と比較し少なかったことも影響しました。一方で、強化を進めている「車検・整備」「車買取・販売」は、厳しい環境のなか前期並みの売上水準を確保しました。
利益面では、販売促進策を強化したものの売上規模の減少から売上総利益率が前期比2.1ポイント低下した結果、特に下期において管理可能な経費の削減に努め、販管費を前期比25億円(3.9%)削減しましたが、大幅な減益となりました。
2015年3月期の業績
(単位:億円)
2015年3月期 | 前期比 | |
---|---|---|
売上高 | 2,094 | △9.6% |
営業利益 | 64 | △54.1% |
当期純利益 | 46 | △52.9% |
ROE(%) | 3.3 | △3.5pt |
国内オートバックスチェン店舗
売上高(全業態)※
(単位:億円)
2015年3月期 | 前期比 | |
---|---|---|
カー用品販売 | 2,221 | △11.5% |
車検・整備 | 166 | △0.8% |
車買取・販売 | 230 | △0.3% |
その他 | 46 | △0.8% |
全店合計 | 2,663 | △9.9% |
※FC加盟法人店舗の売上を含む
中期経営計画1年目の
成果と課題を
教えてください。
「クルマのワンストップ・サービス」業態への変革に向け、基盤整備が進展しました。この成果を収益拡大に結びつけていくことが今後の課題です。
当期は4ヵ年の「2014中期経営計画」のスタートの年として、中核事業である国内オートバックス事業において、カーライフを総合的に支援する「クルマのワンストップ・サービス」業態への変革に向け、「カー用品」「車検・整備」「車買取・販売」「Eコマース」の4つの重点課題に取り組み、基盤整備を進展させました。
カー用品では、タイヤ販売に注力し、タイヤ専門館をこれまで6店舗出店するとともに、国内有力メーカーとの協働でオートバックスグループ専売タイヤ「エスポルテ AB01」を新たにラインナップするなど、高機能タイヤを手ごろな価格で購入できる環境を整備しました。また、迷わず安心して買えるブランドとして、プライベートブランドを「AQ.(オートバックス クオリティ.)」として統一し、車内グッズからオイル・バッテリーなどへと展開を広げています。当期は本格的に収益の向上に寄与できませんでしたが、来期以降も継続した強化を図り、粗利率の改善を進める考えです。
また車検・整備は、リーマンショックから5年後にあたり2回目の車検対象車両が減少するなか、インターネット予約に加え、お客様に対する店舗でのご案内とコールセンターの本格稼働によるアウトバウンドの実施を通じて、車検実施台数を前期比1.4%増加の約58万9,000台へと伸ばし、1991年からの累計で500万台を突破しました。
車買取・販売では、カーズ加盟店舗を359店舗から451店舗に拡大し、全国規模での販売促進を行い、車両の買取・販売を強化した結果、総販売台数は前期比3.4%増加の約23,900台となりました。
Eコマースにおいても、自社オンラインショップ“AUTOBACS.COM”の拡充を進める一方で、オイル交換WEB予約に事前に商品選びができる機能の追加や、Amazon.co.jpで購入した商品の店舗取付サービスを開始するなど、店舗への送客を促進する取り組みを強化しました。
こうした基盤整備の成果を収益拡大に結びつけていくことが、今後の課題です。お客様のカーライフのお悩みやご要望に応え、的確に価値をお届けすることがオートバックスチェンの成長の鍵を握ると考えています。
なお、事業環境といたしましては、個人消費は明るさが戻りつつあるものの、引き続き新車販売が低迷する見通しです。よって「2014中期経営計画」の目標の一部については、2015年3月期の業績とかい離が大きくなっていることなどにより「2014中期経営計画」の一部見直しを行い、最終年度の営業利益と重点課題における数値目標を修正しました。引き続き「オートバックス事業」「海外事業」「新規事業」の3つを柱に、中長期の成長に向けた施策を着実に実行し、計画の達成を図る考えです。
「2014中期経営計画」(2015年3月期~2018年3月期)の数値目標の見直し
(2015年7月30日発表)
2018年3月期 (2014年5月 計画時) |
2018年3月期 (2015年7月 修正) |
2014年3月期 (実績) (前計画終了時) |
2015年3月期 (実績) |
2016年3月期 (見通し) |
|
---|---|---|---|---|---|
経営数値目標 | |||||
営業利益(億円) | 180 | 150 | 139 | 64 | 100 |
ROE(%) | 8.0 | 8.0 | 6.8 | 3.3 | 5.0 |
DOE(%) | 3.0以上 | 3.0以上 | 4.1 | 3.7 | 3.7 |
重点課題の目標 | |||||
車検実施 台数(万台) |
100 | 80 | 58 | 58 | - |
車買取・販売 売上高(億円) |
500 | 500 | 230 | 230 | - |
市場動向を踏まえた
今後の戦略を
お聞かせください。
車の平均保有年数が長期化するトレンドを捉え、「車検」を軸にお客様との関係の強化を通じて、カー用品、車の買取・販売へと展開するモデルを構築し、収益の最大化を図っていきます。
自動車の小型化、高性能化に伴い、カー用品の単価下落やライフサイクルの長期化が進み、国内カー用品市場は今後も縮小していくものと見ています。一方で、自動車保有台数は約6,000万台の水準にあり、平均使用年数も12年以上と長くなっており、メンテナンスや車検・整備は安定した需要が見込まれます。
こうしたなか、見直しを行った中期経営計画において当社グループでは、今後メンテナンスとりわけ「車検」を軸にお客様とのつながりを強化することを通じて、収益の最大化を図っていきます。
車検は、法令により定期的に需要が発生するとともに、多くのユーザーがこのタイミングでタイヤ交換を含む車の整備や車の乗り換えを検討します。そのため、車検の顧客獲得は、カー用品の販売や車の買取・販売にとっても重要なポイントになります。また、購買行動の分析から、オイル交換を実施したお客様への働きかけにより、車検につながるケースが多いことが明らかになっています。
こうした視点から、顧客基盤である約1,500万人のポイントアップカード会員を中心に、マーケティング施策を強化し、オイル交換から車検へ、車検からタイヤ交換、車の買取・販売へとつなげる成長モデルの構築を戦略的に推進する考えです。
関係を強化する施策として、当期において会員制度の見直しを行い、オイル交換やバッテリー交換など、8つのメンテナンスサービスを無料で行う「メンテナンス会員」をスタートしました。今後、ポイントアップカード会員からメンテナンス会員への移行を進めていきます。また、CRMシステムを刷新し、車種や購買データに基づき、きめ細かくアプローチする体制を整備しました。そして、店舗を中心に、インターネット、コールセンターが連携してお客様の利便性を高めるオムニチャネルに向けた取り組みを進め、「お客様とつながり続ける関係の構築と接点の強化」を通じて、オートバックス事業の中長期的な成長を目指していきます。
店舗子会社の
収益改善をどのように
進めていきますか。
当期、全体で赤字となった国内店舗子会社は、常務執行役員を収益改善の責任者とし抜本的な改革を進めていきます。
国内店舗子会社の当期の売上高は前期比16.6%減少の678億円、営業損失は19億円(前期は5億円の営業利益)となり、収益改善への取り組みが急務であると認識しています。
当期は店舗配置・運営体制の最適化に向け、FC加盟法人への株式譲渡や店舗の譲渡・譲受、子会社間の合併などの再編を実施するとともに、本部人員を子会社へ異動し営業強化を図りました。2016年3月期は、期初より常務執行役員を収益改善の責任者とし、抜本的な改革を進めていく方針です。基本的な考え方として、全体戦略に基づき「車検・整備」「車買取・販売」の売上拡大を進める一方で、19社の店舗子会社(2015年3月末現在)各社の売上、粗利、経費に関わる項目における基準値に対して劣る部分の原因を明らかにし、個社ごとに対策を講じ収益力の改善を図ります。具体的なテーマとしては、「売価管理の推進」「メーカーとの仕入条件交渉」「人員効率の改善」「IT関連システムコストの削減」などを軸に、取り組みを進めていきます。
海外事業の現状と
今後の展開を
教えてください。
ASEAN地域を中心に中長期の収益実現に向け出店ペースを加速していきます。
海外事業は、中長期的に収益を実現していく事業と位置づけ、当期はその基礎固めを実行しました。既存出店地域で不採算店の閉店などの再構築を進める一方で、タイにおける新たな出店や、マレーシアの現地子会社設立、海外人員の増強など、経営基盤の強化を進めました。
2016年3月期以降は、成長が続くASEAN地域を中心に現地企業とのパートナーシップを最大限に活用し、出店ペースを加速していきます。2016年3月期においては、タイ6店舗、マレーシア4店舗、インドネシア2店舗の計12店舗の出店を計画しています。インドネシアの出店は現地インドモービルグループとの合弁会社によるもので、これが初出店となります。
海外の新規出店にあたっては、国内の大型店とは異なり、ショッピングモールなどの商業集積地や人口密集地に小型店舗を複数展開することで、ブランド認知の向上を図っていきます。また、小売だけでなく卸売などの周辺事業においても、現地企業との提携やM&Aも視野に、スピードを重視した施策を展開していく考えです。
注:( )の中は対前期末比
積極的な株主還元を
続けていますが、
今後の方針を
お聞かせください。
引き続きDOE(連結株主資本配当率)3%以上の安定配当を継続し、機動的な自社株買いを実施していく考えです。
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題のひとつと位置づけており、当期においてもDOE3%以上の配当方針のもと、1株当たり配当を年間60円(DOE3.7%)としたのに加え、総額55億円の自社株買いを実施し、総還元性向は222.2%となりました。
2016年3月期以降の株主還元についても、資本効率の向上を目指して、経営環境や財務の安定性を考慮しつつ、積極的な還元を行う方針に変更はありません。
配当方針はDOE3%以上を維持し、収益の状況に応じて安定的、継続的な配当を実施するとともに、自社株買いも含めた株主還元を機動的に実施していく考えです。